中世芸能の発生 17 遊行僧、田楽法師の装束



つづき

六波羅蜜寺の空也上人立像は、鹿の角の杖を持っている。


「梁塵秘抄」306
聖の好むもの 木の節 鹿角(わさづの) 鹿の皮 蓑笠 錫杖(しゃくじょう) 木櫺(もくれんじ)  火打ち笥(ひうちけ) 岩屋の苔の衣


そうですかー。

梁塵秘抄。
後白河法皇プロデュースによる今様(当時のはやり歌)の集成。
中世の色濃い内容。


空也上人が鞍馬山で修行をされていた時、
上人が愛でていた鹿を猟師が殺してしまった。
上人はこれを悲しみ、以降その皮を衣にし
角は杖頭につけて過ごした、と言い伝えらる。


修行中の釈迦が、鹿と関わる話があるそうだ。
山岳修行者たちが、
法性に入る宗教的な意味と岩角に座る実用から、
鹿皮を腰につけていたようで、
修行者の鹿皮の利用には、宗教的意味と実用の両面がある。
現代も修験者(山伏)は、腰に鹿皮の引敷をつける。

鹿の意味の変遷には、
原始的なサチ(獲物)としての神聖から、
仏教的な解釈が重なっていった変遷が見えると私は思う。



中世の遊行の僧たち

裳付姿を遊行の僧・平安時代  風俗博物館
http://www.iz2.or.jp/fukushoku/f_disp.php?page_no=0000068



ついでに。

田楽法師・平安時代  風俗博物館
http://www.iz2.or.jp/fukushoku/f_disp.php?page_no=62


簓(ささら)、持ってます。

古代の農耕儀礼から、
人に見せる芸能要素が強くなってきた頃の中世の田楽。

田楽法師らは、華美な服装で
鼓や羯鼓の早いリズムで軽々とアクロバティックな動きで舞って、
中世の人々を熱狂させた。

・2008/06/08 羯鼓の夏
・2008/06/07 羯鼓


・2008/06/11 『身毒丸』 折口信夫 01
田楽法師 身毒丸 の物語。

制タ迦の竪てる二丈あまりの花竿は、
神事のなごりの、神のよりしろ。


つづく
by moriheiku | 2008-09-19 08:00 | 歴史と旅
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