中世芸能の発生 05 神祇信仰と租税徴収


つづき

古来の信仰にもとづく政教一致だった社会体系で、
国家が運営されていた時代、

ヤマト王権が、
その社会体系の上にあてはめた渡来の律令制度で健全に国を運営するためには、
古来の信仰と祭祀の体系を保った共同体が
各地で健全に機能しつづけることが必要だった。

しかしこの律令制度は、8世紀後半あたりから崩れはじめる。


大昔は、自然の力はそのまま人の命に直結していた。
自然の威力と恵みに対する実感と畏れは人々に身近で、
自然の力(神)を祀ることは、共同体の維持に直結することだった。


やがて時代が進み、農環境が整備され、
生産は増大し国家が安定する。

それにつれ律令国家を支える古来の共同体に変化があらわれた。


技術と生産性が上がったことで、
人々はそれまでより自然の力(神)に期待しなくても、
生産を上げることが可能となった。


自然にたよらなくても収穫を上げられる可能性が増すと、
朝廷にその年に採れた初穂をおさめることで、
当時最高の神聖と位置付けられたヤマト王権の神霊の付いた幣帛を受け取り、
次の豊穣につなげようというマジカルな期待に頼る必要はなくなる。

ヤマト国の支配体系(租税の徴収を含む)は、
そのような古来の信仰に基づく社会体系を利用していたため、
国家の運営は滞った。



共同体では古来の祭祀と宴は行われていたが、
マジカルな神聖に頼らざるをえなかった以前とは変わって、
採れた収穫は、最低限の初穂を神と国に奉げるだけになり、
残りは収穫を集める立場の者が私有するようになった。


こうして共同体の中で、個人の私有が生まれ、
貧富の差があらわれたと考えられる。






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つづく
by moriheiku | 2008-09-05 08:00 | 歴史と旅
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