骨の笛



持統10年7月10日(696年8月13日)、高市皇子薨去。
城上(きのへ)に殯宮(あらきのみや)を営む。
長い殯(もがり)。

城上は二上山の東。
現在の奈良県北葛城郡広陵町。
広陵 陵 みささぎ。


万葉の時代は、殯(もがり)を、荒城(あらき)と言った。
墓を奥津城(奥都城・おくつき)と言った。
現在も神道で、墓を奥津城(おくつき)と言う。

殯(もがり)は「喪上がり」からきていると考えられている。


高市皇子の墓は、大和国広瀬郡との記録があり、
広陵町の新木山(にきやま)を古墳に想定する説がある。
(『万葉集(一)』中西進著)

新木山(にきやま)の読みは、
漢字をあてて後の(あらき)の転化にも思われる。

高市皇子は高松塚古墳の被葬者の説もある。



高市皇子の殯に、柿本人麻呂の詠んだ挽歌(一部)、
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 …
鼓(つづみ)の音は 雷(いかづち)の 声(おと)と聞くまで 
吹き響(な)せる 小角(くだ)の音も 敵(あた)見たる 虎か吼ゆると
 …

(訳)
鼓の音は雷鳴かと思われるほど 
吹き響かせる笛の音も 敵を見た虎が吼えるのかと
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小角(くだ)の音。
古代の軍楽、鼓吹の音なんだ。


672年、壬申の乱で、高市皇子のが、
父(大海人皇子、後の天武天皇)を助け敵を突破した時の様を歌った部分の一部。

2008年06月03日 虎に翼を着けて放てり



吹き響(な)せる 小角(くだ・管)の音。

笛の音。

その音に、
虎が吼えるかと敵がおびえるその笛は、
動物の角、骨でできていたようだ。
古代を過ぎると、廃れた。


世界中で発掘、確認されて残る最古の笛はほとんど、
動物の骨でできている。

日本で同様の発見はない。

石器時代の日本に、やはり動物の骨の笛があったとしたら、
日本は土壌が酸性なので、
骨は溶けて残らない。

同様に原人旧人の人骨の発見も、
ほぼ期待されない。







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by moriheiku | 2008-08-28 08:02 | 音と笛のまわり
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