芸能の発生 古代~中世 12 和歌と祝詞 呪師猿楽


つづき

古代の三輪は、
能楽の祖、猿楽の人々が多く住む里だったと聞くことがあるけれど。
初瀬、巻向、三輪周辺は、
古い時代に歴代の宮が置かれた場所だったけれども、
政治宗教一致の時代、三輪周辺は祭祀の土地でもあって、
猿楽の人々というのは、古い芸能の人々、
つまり古い祭祀に関わる人々だったということかと想像する。



以前葛城のあたりのことで少し書いたけど。
薬や祈祷の知識と技術を持った山岳系の人々は、
里の人々が病の時、加持祈祷をしたり、
田植えや正月などの季節に言祝ぎに里へ下りた。

三輪山のふもとあたりの海柘榴市は、
山のものと里のものの交換の市でもあった。

また公式な仏教が、やはり大和川を遡り
このあたりから上陸したことからわかるように、
海外からの文化の上陸地でもあった。


山岳信仰は、様々なものを取り入れ、雑密的なものに展開し、
さらに空海の伝えた密教が入り密教仏教色が増す。

古来の祈祷、魂鎮(たまふり)も、
渡来の思想や、散楽等の芸能などを取り入れつつ、分岐していった。


芸能は古くは宗教と一体だったと思われる。
時代が下ると、寺社に属し、
集団で一座を作り各地を勧進興行して渡り歩く人々もあらわれる。

また寺社の祭礼で所作や舞を伴うまじない部分を
神職に代わって行うようになった芸能の人々もあった。



古い猿楽の芸の主なものは物真似だったという。
そうであれば、よくわかる。

現在も、田遊びという伝統の神事が各地で行われている。
田植えに先立ち一年間の稲作の作業を
擬似的に演じる(物真似する)ものだ。

これは、予祝。

一年の理想的な動きをすることで、田の精霊がそれにかぶれて、
そのとおりに働き、そのとおりに豊かな実りをむすぶよう
類感させているのだ。

まじない。呪術的な性質の濃い、古い時代の信仰と芸能。

正月の言祝ぎとおなじ、こちらは動きでする予祝。


▽2008/07/28 芸能の発生 古代~中世 03 和歌とよごと

▽2008/07/28 芸能の発生 古代~中世 02 ことわざと歌




そのように予祝としての祝福、つまりまじないと猿楽は親しい。

猿楽のうちには、寺社の祭礼で、
所作や舞を伴うまじないの儀式を担当するようになった猿楽があった。
それが呪師猿楽で、
世阿弥のいた座はこの呪師猿楽座の流れかなと思う。



能であって能でないと言われるストーリーのない、
呪術のにおいのする「翁」は、
能、猿楽に限ったものでなく田楽などでもする。


それで私はお能の「翁」は、
能楽のルーツ、猿楽田楽やそれら諸々のルーツに
根を挿しているものと思う。

その流れをくんで、和歌と祝詞は、
世阿弥のお能にも語られることになったと思う。


つづく
by moriheiku | 2008-07-31 08:03 | 言葉と本のまわり
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