参考:『古代研究〈3〉国文学の発生』折口信夫 芸能の発生に心が向くこの頃。再読。 底なしの層の深い本で、幾度でも幾通りの道をたどっても読めてすてき。 昔、それぞれの国はそれぞれの国の神を祀っていた。 国々の統一の過程で、 例えば、ある国がヤマト国に覆われる時、 その土地の神を祀っていた国にヤマト国の神と信仰が入る。 それぞれの国の語り部(語部)は、 もともとの国の神(国津神)の来歴、神と土地や人の由緒を述べた。 折口によるとこれは国の歴史を言うためでない。 ある国が他国に覆われる時、 もともとその国で祀られていた神自身が、 そこで祀られる本縁を明らかにするため。 記紀などに見える語り部の口うつしに近い部分で使われる人称に、 一人称が見える。 つまり、語り部の語った叙事詩は、 語り部が客観的に神の歴史を語るのでなく、 語り部の口を通した神自身が語る自叙伝であったと考えられる。 その一人称の神語の叙事が、恍惚にある語り部の空想だとしても、 その空想は種族の意向の上の空想であり、種族の記憶の復活だ。 職業団体(かきべ)としての語部は、おおむねこうして成立した。 ------------------------------------------------------- かう言ふ邑々の併合の最初に現れた事實は、信仰の習合、宗教の合理的統一である。邑々の間に嚴に守られた祕密の信仰の上に、靈驗あらたなる異族の神は、次第に、而も自然に、邑落生活の根柢を易へて行つたのである。飛鳥朝以前既に、太陽を祀る邑の信仰・祭儀などが、段々邑々を一色に整へて行つたであらう。邑落生活には、古くからの神を保つと共に、新に出現する神を仰ぐ心が深かつたのである。 ------------------------------------------------------- 【青空文庫 折口信夫 國文學の發生(第一稿) 呪言と敍事詩と】より 海を隔てた大陸からの神仏を習合するのと同じ、 神々の統一。そして忘却。 由緒・故実が必要だったこと ・2009-04-20 中世芸能の発生 114 中世人にとっての故実 ・2009-04-25 中世芸能の発生 119 師範と弟子 ・2009-04-19 中世芸能の発生 113 武家政権にとっての故実 ・2010-06-20 中世芸能の発生 330 祝福の系譜 つづく
by moriheiku
| 2008-07-26 08:00
| 言葉と本のまわり
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