神事から芸能へ 古代~中世 01 神々の統一と語部


参考:『古代研究〈3〉国文学の発生』折口信夫

芸能の発生に心が向くこの頃。再読。
底なしの層の深い本で、幾度でも幾通りの道をたどっても読めてすてき。


昔、それぞれの国はそれぞれの国の神を祀っていた。

国々の統一の過程で、
例えば、ある国がヤマト国に覆われる時、
その土地の神を祀っていた国にヤマト国の神と信仰が入る。


それぞれの国の語り部(語部)は、
もともとの国の神(国津神)の来歴、神と土地や人の由緒を述べた。

折口によるとこれは国の歴史を言うためでない。
ある国が他国に覆われる時、
もともとその国で祀られていた神自身が、
そこで祀られる本縁を明らかにするため。

記紀などに見える語り部の口うつしに近い部分で使われる人称に、
一人称が見える。

つまり、語り部の語った叙事詩は、
語り部が客観的に神の歴史を語るのでなく、
語り部の口を通した神自身が語る自叙伝であったと考えられる。

その一人称の神語の叙事が、恍惚にある語り部の空想だとしても、
その空想は種族の意向の上の空想であり、種族の記憶の復活だ。

職業団体(かきべ)としての語部は、おおむねこうして成立した。


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かう言ふ邑々の併合の最初に現れた事實は、信仰の習合、宗教の合理的統一である。邑々の間に嚴に守られた祕密の信仰の上に、靈驗あらたなる異族の神は、次第に、而も自然に、邑落生活の根柢を易へて行つたのである。飛鳥朝以前既に、太陽を祀る邑の信仰・祭儀などが、段々邑々を一色に整へて行つたであらう。邑落生活には、古くからの神を保つと共に、新に出現する神を仰ぐ心が深かつたのである。
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【青空文庫 折口信夫 國文學の發生(第一稿) 呪言と敍事詩と】より



海を隔てた大陸からの神仏を習合するのと同じ、
神々の統一。そして忘却。




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つづく
by moriheiku | 2008-07-26 08:00 | 言葉と本のまわり
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