土地の木 02





つづき




ぱお(実家)のあたりも、
町名が整理される前に長く呼ばれていた土地の名前がある。

新しくなった町名は全く別のものだが、
古い地名には、この木の名前が入っている。


私はなぜかぱおの、その一番大きな木の名前を長く知らずにいた。

ある時、父に、
「あの木の名前はなに?」と聞くと、父が、

「○○○。ここの地名と同じだよ。○○○(土地名)と言うだろう。」

と教えてくれた。

ああそうだったのか。




昔は、素朴に土地を区分けしたのだろう。

いつまでかは知らないが、
昔、ぱおのあるあたりは、高木の種類であるその高い太い木が数多く繁り、
日陰を作っていた土地なんだろう。


あの木々のあるところ、と言うと
当時の住民が分かるようなそんな地名の一つ。

その木がたくさん生えていた場所を指すごくシンプルな地名。




この木の名前が入った土地の名は、
辻の名称のようなものだけに微かに残っていたが、
今度の区画の整理でそれももう無くなる。


ぱおを台風や竜巻の被害から防いでくれていたこの木は、
家々が建つずっと以前から土地に生えていた木だ。



何も気にしてなかった。

この木はその土地に最も合って適応していた木。
潜在自然植生だ。


この木は、伐ってはいけない。




見まわすとぱおの周囲の木々、
ほかのお宅もぱおの庭木や生垣も、
人の好みで後から植えたものだ。


庭師さんが長い年月丹精して作られた松や椿も、
それぞれが大切だけど、
それでも一等大切なのは、土地に自生していたこの木だ。


失われていったこの木々と一緒に、
木の名前の入った地名も消える。




つづく
by moriheiku | 2007-09-04 08:00 | 言葉と本のまわり
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