料理本のアートな体験 




新しいレシピを試す時は、まずその通りに作ってみる。
レシピ通りに作ることで、発見がある。それがすんごく楽しい。

同じ材料と同じ調味料の同じ「煮しめ」という名前のお料理でも、
レシピを作った人それぞれの煮しめがある。
実際にそのレシピで作るという作業をするとよくわかる。



誰かのお料理レシピでお料理を作るのは、
森村泰昌さんが作品を作るのと
重なるところがあるんじゃないかな、とよく思う。

(森村泰昌:
 自分自身が、モナリザやゴッホの肖像画等、名画の人物に扮し
 名画そっくりに仕立てたセルフポートレート写真をつくり続けているアーティスト。)



森村さんは、自分自身で美術作品になっていく過程で、
作家の心境を追体験できたり多くの発見があるとのこと。

そういうのなんだかわかるな。
絵を見るだけ、文を読むだけ、じゃなくて
実際に作ることを通して体験(追体験?体感?)できることがある。
経験してわかるものがある。


誰かのレシピを、その通りに作るのは、
私にはその味の好き嫌いを知るためじゃない。

素材選び、切り方、調理方法、盛り付け、味、本のつくり、
それらを通してレシピを作った人の感じや世界観を
五感で立体的に体感できるってとこかな。

そうするとすんごくはっきりする。
自分とは全然違う世界が展開されて、感動したりする。
景色が違う。

旅行みたい。
爽やかな世界に行ってみたり、ストイックな世界を実感したり、
あたたかみのあるやわらかい世界の住人になったり。

逆に、これムリ、受け入れたくないものはムリ、だったりもして。
口に入れ身になるものだけに余計に。



また、ツールが変わると発想が変わるように、
レシピそのままが自分の舌にちょっと合わなくても、
その発想がとても参考になることがある。
お気に入りのレシピはそういうものが多い。


お料理本は、遊べるから好き。
by moriheiku | 2005-09-18 08:00 | 言葉と本のまわり
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