つづき 街道の市(イチ)の立つ日に、市に行こうねって言っていて、今年も行った。 今年も風が強く、立ち並んだ屋台のビニールの屋根がばたばたはためく。 予約しておいた厄除けになるというおまんじゅう。 神社で神様に捧げたお米が使われてるんだって。 このあたりのどの和菓子屋さんも、 今日一日はそのおまんじゅう作りに追われる日。 みんなへのおみやげに私もたくさん買ったつもりだったけど、 そのおまんじゅうを買い求めに 各和菓子屋さんの入口を出て通りまで並んでいる人の中には、 五十個単位で注文されている方もちらほらいらっしゃる。 街道の昔からの市。 春先に出回る海の小さな白い魚が山盛りになっている屋台に、 寒い中の春を見る。 去年の市は、みぞれの中に白い梅が咲いていた。 今年は梅の花はまだ。 めずらしく屋台でヤキソバを買って (ヤキソバ、何年ぶり???) それから今年も酒屋さんで、新酒の酒粕を買って帰った。 にぎわってたね。 また来ることができたらいいな。ミチ(道)のイチ(市)。 日本の伝統体感☆ ◆ イチ の 「イ」 古代の市(イチ)は、ミチ(道)を通って、 文物や人やさまざまのものの交錯するところで、 イノチやチカラのあつまるところと考えられた。 「イチ」(市)の語を構成する「イ」の一音節は、元来、 生命力・霊力の横溢する状態を意味。 その「イ」の音のイメージは、 たとえば「厳(いつ)」「いかし(厳し)」の語に今も感じられるように、 たけだけしいほどの自然の生命力の横溢。 古い時代の人々はそういう性質や力を霊威・神威と考えて、 「イ」のような性質を表す一音節が 神聖なものをあらわす語に用いられていったと考えられる。 (古代における神聖とは、生命力・霊力の強さ ・2010-02-04 中世芸能の発生 268 古代における聖性とは) 「イ」を語根とすることば ---------------------------------------------------------- いか・し 【▽厳し】 (大辞林) (1)霊威が盛んである。神秘的な力に満ちている。 (2)たけだけしい。荒々しい。 いつ 【▽厳/〈稜威〉】 (大辞林) (1)神聖であること。斎(い)み清められていること。 (2)勢いの激しいこと。威力が強いこと。 ---------------------------------------------------------- いつ・いち【厳】 → 「いちはやぶる」 → 枕詞の「ちはやぶる」 例えば厳島(いつくしま)神社のある厳島(いつくしま)は、 「イ」の横溢する島。とことばの音から感じられる。 ・2008-10-03 中世の人の感性 元来、日本の「イノリ」(祈り)とは、 抽象的な神に敬虔な願いを捧げるような新しい祈りでなく、 たけだけしい「イ」を宣(ノ)る強い行為であったこと。 ・2010-06-05 中世芸能の発生 320 祈(イノ)リ イ罵(ノ)り このように古い時代の「イノリ」は、 強い行為によって効果の伝染を期待する身体的実感を元にした行為で。 それは、自分から分離した遠ところにある抽象的な神などの存在に祈るものでなく、 イノリの対象が自分とつながっているという、 自他が分離していない、したがって伝染する、という 身体的実感に基づくものであったことがことばや歌からもわかる。 他、「イ」の性質を含む行為の例 斎(い)む 忌(い)む 祝う 呪(いは)う ・2010-02-06 中世芸能の発生 270 イハフ ・2010-02-07 中世芸能の発生 271 イハフ言葉 イハフ行動 ・2010-02-08 中世芸能の発生 272 マツル ・2010-02-09 中世芸能の発生 273 イム 「チ」 ・2010-02-11 中世芸能の発生 274 イノチ ユリの花 「ホ」 花の穂 稲穂 祝ぐ(ほぐ 寿ぐ) 言祝ぐ(ことほぐ) 誉む(ほむ) ・2008-08-13 「ほ」を見る。 「ヨ」 世 代 夜 黄泉(よみ) 常世(とこよ) 詠む(よむ) 寿詞(よごと) 暦(こよみ) ・2010-02-12 中世芸能の発生 293 ヨ ・2010-02-15 中世芸能の発生 296 ヨム 和歌を詠む(よむ) 芸能 「ニ」 匂う(ニホフ) 丹(ニ) ニフブ(和ぶ 柔和) ニコニコ ・2010-02-13 中世芸能の発生 280 ニフ 土地 ・2010-02-13 中世芸能の発生 278 ニコニコ ニフブ 笑む ・2010-02-13 中世芸能の発生 277 住吉のハニフ(黄土) 「チ」「二」「ヒ」 一音節 固有名詞にならないもの 土橋寛 ・2010-02-21 中世芸能の発生 288 自然 身体 実感 「イ」の印象を意識する時、 イ・・イカリ(怒り) イカリって、、こわいね。 リアルに感じる。 ◆ ミチ イチ の 「チ」 漢字より前からの古い時代の「チ」の音を含む語、例えば 「ミチ」(道)、「チ」(血)、「チチ」(乳)、「ヲロチ」(大蛇)、「イノチ」(命)、 等々は、 「チ」の音のあらわす種類の性質を内蔵するという感覚に基づき 「チ」の一音節を語幹としたことば。 「チ」は チカラ の チ 命は「イ」の「チ」。 ・2010-02-11 中世芸能の発生 274 イノチ ユリの花 古い時代からのことば、 古い時代の、共通する一音節の音を語根として含む語をいくつか並べてみると、 それらに共通する性質がよくわかり、 一音節自体の音の性質も理解できる。 例えば、「ヨ」の性質を含むもの。「ヨ」の性質。 世 代 夜 黄泉(よみ) 常世(とこよ) 詠む(よむ) 寿詞(よごと) 暦(こよみ) ・2010-02-12 中世芸能の発生 293 ヨ 語の語根となり様々な語を形成している特徴的な一音節の 「イ」「チ」「二」「ヒ」「ヨ」等を含む名詞、動詞、形容詞、神名等を見ると、 文字より前の古い時代の人々が、 何を神聖視し崇拝してきたかがうかがえる。 それは固有物でない、 性質(昔の人にとっての霊質)であったと理解される。 「ホ」 花の穂 稲穂 祝ぐ(ほぐ 寿ぐ) 言祝ぐ(ことほぐ) 誉む(ほむ) ・2008-08-13 「ほ」を見る。 「チ」「二」「ヒ」 一音節 固有名詞にならないもの 土橋寛 ・2010-02-21 中世芸能の発生 288 自然 身体 実感 「ヒ」 ・2010-07-07 中世芸能の発生 335 固有名詞にならないもの 「ヒ」のこと ・2010-02-17 中世芸能の発生 284 ハタ ヒレ ・2010-02-18 中世芸能の発生 285 ヒ ヒル ヒヒル 蝶 ・2010-02-19 中世芸能の発生 286 ヒレ ヒラ ヒレ有る骨柄 ・2010-02-20 中世芸能の発生 287 ヒロメク 蛇 剣 「キ」のこと ・2011-09-05 中世芸能の発生 412 キ(木) 毛(ケ) キ・ケ(気) 「ニ」のこと 匂う(ニホフ) 丹(ニ) ニフブ(和ぶ 柔和) ニコニコ ・2010-02-13 中世芸能の発生 280 ニフ 土地 ・2010-02-13 中世芸能の発生 278 ニコニコ ニフブ 笑む ・ 2012-02-15 中世芸能の発生 427 厄除けのおまんじゅうの分配 ・2010-05-17 中世芸能の発生 312 ことばの神聖視 つづく
by moriheiku
| 2012-02-12 08:00
| 歴史と旅
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