中世芸能の発生 373 今様 法文歌 物語り



つづき


今様歌集『梁塵秘抄』の歌詞集(歌謡部)十巻のうち、
現代に残るのは巻第一の一部と巻第二。

巻第一は断簡で
「長歌(ながうた)」「古柳(こやなぎ)」「今様(只の今様)」が
わずかに残る。

巻第二は、
「法文歌(ほうもんのうた)」「四句神歌(しくのかみうた)」「二句神歌(にくのかみうた)」が収録されている。



「法文歌(ほうもんのうた)」

仏教の教えを様々な角度からとりあげ歌う。
天台教学の法華信仰や浄土信仰が見られ、真言密教に基づく歌も含まれる。

経典内容を歌謡化で仏教語も多いが、
歌謡として興味をひくように、
物語的設定や色彩豊かな幻想的世界を創出などの工夫がある。


歌の形式は、長短句を四回くり返す四句形式のものがほとんど。定型的。
八・五音が多く、その八が四・四に切れる場合が多い。
四句形式は起承転結になりやすく、落着いたなだらかな感じで、
法文歌の静かな雰囲気によく合う。



─ 法文歌と和讃 ─

法文歌は仏教歌謡の和讃の世俗化したものといわれている。
長編の和讃の一部が、法文歌になっているものもある。



─ 法文歌と絵解き ─ 

法文歌の内容に、羊鹿の三車、南天鉄塔など
中世の仏教画によく出てくるものが歌われており、
仏教画、絵解きとの関わりが考えられる。



絵解き えとき (大辞林)
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絵の意味を説明すること。特に、涅槃図(ねはんず)・曼荼羅(まんだら)・寺社の縁起絵・高僧伝絵などの宗教的絵画について意味を説明すること。また、その言葉やそれを行う人。鎌倉時代より芸能化しはじめ、室町時代には俗人の解説者も現れた。
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今様は流行り歌ではあったが、仏教の和讃、説経唱導に似た性質を含む。
熊野比丘尼は、歌比丘尼とも言われたもので、
そちらへつながっていったものもあろうか。



絵解き比丘尼 えときびくに (大辞泉)
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歌念仏を歌い、地獄・極楽など六道の絵解きをしながら勧進して回った熊野(くまの)比丘尼。のちには、遊女同然となった。歌比丘尼。勧進比丘尼。
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参考:『完訳 日本の古典 第34巻 梁塵秘抄』



・2010-12-01 中世芸能の発生 368 今様



物語 おとぎばなし 物語的設定や色彩豊かな幻想的世界の創出
・2009-06-07 中世芸能の発生 142 物語
・2009-06-08 中世芸能の発生 143 寺社縁起
・2009-06-09 中世芸能の発生 144 お伽話
・2009-06-10 中世芸能の発生 145 唱導説経語りの流れ
・2009-06-11 中世芸能の発生 146 仏教文学
・2009-06-12 中世芸能の発生 147 神話からお伽話へ


物語りした人々
・2009-05-26 中世芸能の発生 134 芸能の担い手
・2009-05-28 中世芸能の発生 136 優しい誤解
・2009-05-25 中世芸能の発生 133 俗の土壌
・2009-05-24 中世芸能の発生 132 説経・唱導のストーリー





・2010-12-05 中世芸能の発生 370 梁塵秘抄 概略
・2010-12-06 中世芸能の発生 371 今様 概略
・2010-12-07 中世芸能の発生 372 今様 時代背景
・2010-12-08 中世芸能の発生 373 今様 法文歌
・2010-12-09 中世芸能の発生 374 今様 四句神歌
・2010-12-10 中世芸能の発生 375 今様 二句神歌
・2010-12-12 中世芸能の発生 376 遊びをせんとや生まれけむ



つづく
by moriheiku | 2010-12-08 08:00 | 歴史と旅
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