つづき 『梁塵秘抄』概略。 覚書。 参考:『完訳 日本の古典 第34巻 梁塵秘抄』 『梁塵秘抄』は、後白河院による今様の集大成。 本来二十巻であったらしい。 (鎌倉時代中期『本朝書籍目録』「梁塵秘抄二十巻後白河院勅撰」の記述) 二十巻のうち十巻は歌詞集(歌謡部)、十巻は口伝集(口伝部)で、 現存するのは、歌詞集の巻第一の一部と巻第二、口伝集の巻第一の一部と巻第十。 『本朝書籍目録』『徒然草』に『梁塵秘抄』の名が見える。 著名な書籍だったようだ。 『群書類従』に収録されていた口伝集巻第十を除くと、 現存する『梁塵秘抄』は、明治四十四年以降、見つかったもの。 『梁塵秘抄』の書名は古代中国の故事に基づく。 梁(うつばり)の塵(ちり)が動くほどのすばらしい美声、つまり歌う<うた>の秘奥を集めた集を意味する、 と日本の古典第34巻にはある。 成立は、口伝集巻第十によれば、嘉応元年(1169)に巻第九まで完成した。 巻第十の成立はそれより遅く、文中に、治承二年(1178)などの記事も見える。 他に治承三年説、治承四年から文治元年(1185)の間とみる説もある。 明治四十四年に見つかった第二巻は、 仏教語などには漢字を多用するが、あて字や誤字が多いものだそう。 表記の大部分は平仮名で、意味のとりにくところが多く、 他本との校合のあとが見られるとのこと。 『梁塵秘抄』全体のにおさめられていた歌の一部ではあるが、 現存する『梁塵秘抄』の今様の歌詞は、約560首。 今様の書き留めとしては他に、 『古今目録鈔』 料紙今様(六十数首 『梁塵秘抄』と一致するものをかなり含む)。 『唯心房集』 所収今様(五十首 うち『梁塵秘抄』434と同歌詞の今様あり。唯心房作とみられる)。 『宝篋印陀羅尼経』 料紙今様(十三首 嘉応二年1170 大報恩寺の阿難尊者木像の体内より出) 記録の類に散見する今様を近世に集大成した『中古雑唱集』、 近世以降の集成『続日本歌謡集成』、などがある。 いずれも現存の『梁塵秘抄』収録分の約560首には及ばす。 『梁塵秘抄』は今様の書き留めとしては最大級。 今様の中には、 法文歌(ほうもんのうた)・神歌(かみうた)・長歌(ながうた)・小柳(こやなぎ)・只(ただの今様 常の今様とも)・大曲(だいごく)とされる足柄(あしがら)・黒鳥子(くろとりこ)・旧河(ふるかわ)・伊地古(いちこ)・田歌(たうた)・早歌(はやうた)・旧小柳(ふるこやなぎ) など、系統を異にし、詞型と曲節に特有のものを持つ多くの種類があった。 『梁塵秘抄』(現存分)の歌詞集では、 巻第一に「長歌)」十首、「古柳」一首、「今様」(只の今様)十首、 巻第二に「法文歌」二百二十首、「四句神歌」二百四首、「二句神歌」百二十一首、 合計566首が収録されている。 そのうち重複と酷似した歌謡を除くと560首となる。 なお、口伝集巻第十に引かれた今様のうち、歌詞集に見られないものが3首ある。 『梁塵秘抄』の今様歌の、さらに詳しい分類は後日追記。 (・・しないかもしれないが。) 参考:『完訳 日本の古典 第34巻 梁塵秘抄』 ・2010-12-01 中世芸能の発生 368 今様 梁塵秘抄口伝集 後白河院 今様即仏道 ・2010-05-21 中世芸能の発生 316 今様即仏道 芸能者と仏教 ・2010-12-06 中世芸能の発生 371 今様 概略 ・2010-12-07 中世芸能の発生 372 今様 時代背景 ・2010-12-08 中世芸能の発生 373 今様 法文歌 ・2010-12-09 中世芸能の発生 374 今様 四句神歌 ・2010-12-10 中世芸能の発生 375 今様 二句神歌 ・2010-12-12 中世芸能の発生 376 遊びをせんとや生まれけむ つづく
by moriheiku
| 2010-12-05 08:00
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