中世芸能の発生 312 ことばの神聖視



つづき


私はことばのはじまりを、下記のようにとらえてる。

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・2010-04-01 中世芸能の発生 298 言語の幹や根 芸術言語論から)

まだ文字のなかった時代は、ものを言いあらわすのに、
そのものにふさわしい音(ことばの音・声の音)を付けた。

その場合、丸く柔らかいものをあらわすのにギザギザという音は付けないし、
さらさらした感触ものにはさらさらという音をつける。
それはその感触にさらさらということばの音の感触がふさわしいからで、
ものの性質、ものの感触と、ことばの音の感触は一致している。

つまりことばの音は、ものそのものである。

ことばはそのものに限りなく近い。近かった。


(だから、文字以前の古いことばの音に、
 我々は知らず知らずにそのものの性質を感じていると私は思っている。

 また、古代に本名を伏せた習慣は、この
 ことばと性質の一致が生きていたから。名前は本人そのもの。)




「ギザギザ」が尖った感じ、と学習しなくてもわかる。
「ギザギザ」という音(ことば)に感じられるそのものの感触。

そうした感触の共有が人にあるので、比喩表現は成り立つし、
音楽は言語を越えて人々に共通の感覚を起こす。

音以外に、例えば色についても、
黒や黒に近い濃い色が重いと印象されたり、
対して淡いパステルカラーを軽い印象に感じる傾向があることも同様だ。



このように、ことば(日本語)の本来は、音や色に近く、
ことばは「もの」と「人」の共感にある感触、印象の発露であって、
伝達のために生まれたと思わない。


人はコミュニケーションのためにことばを発明したいうことを聞くが、
むしろ、「もの」と「人」の共感に生まれる「そのもの」であることばの音が、
コミュニケーションのために用いられていった経過を思う。
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ことばの本質には、もの(自然)と人の間の共感と、共有があり、
ことばのはじまりは、土地の自然風土と無関係ではありえない。


古くは、ものと、ものをあらわすことばの本質は分かち難く、
ものと、ものをあらわすことばは一体ととらえられた。

ことばは、
ことばの組み合わせで間接的にものごとをあらわすものでなく、
ことばは直接そのものの本質をあらわす。

ことばはそのもの自身。





願いを歌ったものでなくても感じられる、
古代歌謡にある祈りのような感覚は、

そのものの本質が声の音になっていることが感じとられるから。



世界中でことばとことばを扱う人が神聖だった歴史があるのは、
それはことばが直接ものの本質と結びついていためだろう。

ことばの芯は、ものの本質と結びついており、
古い和歌はそこを尊重された。




やまとことば   大和言葉 大和詞  (大辞林)
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(1)(漢語・外来語に対して)わが国固有のことば。和語。

(2)わが国固有のことばでよんだ歌。和歌。大和歌。
「—だにつきなくならひにたれば/源氏(東屋)」

(3)雅語。主として平安時代の語。また、女房詞・女中詞のことにも用いられることがある。
「それこそもう—でお人柄におなり遊ばすだ/滑稽本・浮世風呂 3」
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しかしやがて和歌は、人の心を種として(平安時代 紀貫之「仮名序」)、
個人の感慨を述べるものになった。

相聞はもちろん、自然風雅を詠むにしても雅語で、
個人の感情を通して語ることを専らとするようになる。




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つづく
by moriheiku | 2010-05-17 08:00 | 歴史と旅
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