つづき 『日本語に探る古代信仰』から。 「ヒ」の音(語)の表す観念を、 神名の中に見る「ヒ」、 また「ヒ」を語根とする名詞、動詞に見る。 ・ヒ (神名) 高皇産霊神(タカミムスヒ) 禍津日神(マガツヒ) 天之日矛(アメノヒボコ[命]) 天之御中主神、高御産巣日神、神産巣日神、など。 「ムス」は自然に生成すること(苔ムス)。 「ヒ」は霊力を表す語で、この神名は万物の生成する霊力の神格化。観念的な神。 禍津日神は災をもたらす霊力の神格化。 ・ヒル (神名、動詞、名詞) 天照らす日女(ヒルメ)之命=大日孁(ヒルメ)尊 映暎 ヒカリ カヽヤク ヒラメク ヒル 蒜 葱 薤 蛭 ヒル 「ヒル」は「ヒ」の動詞化した語。名詞にも用いられる。 「ヒルメの命」は光り輝く女神で、天照大神の前身の太陽神。 植物や動物に、ヒルと呼ばれるものがある。 植物の蒜(ノビル)葱(ネギ)薤(ラッキョウ)は、 少しの風に葉がヒラヒラ揺れ動く姿からヒルと呼ばれた。 蛭、水蛭は、体をヒラヒラ波打たせて匍匐する形状によって、ヒルと呼んだ。 家鴨をアヒルというのは、足をヒラヒラさせる姿を「足ヒル」と言ったようだ。 口語の「ヒラヒラ」「ヒョロヒョロ」が、「ヒル」から派生した形状言。 ・ヒヒル (名詞、動詞) 白蛾(ヒヒル) 則随風以飄(ヒヽル)□松原及葦原 (□は文字が出なかったので省略) 「ヒヒル」は動詞「ヒル」の重複語。タタク→手(タ)・手(タ)クに同じ。 蛾や蝶がヒヒルと呼ばれたのは、そのヒラヒラ飛ぶ形状にヒの霊力の活動を見たから。 沖縄『おもしろさうし』で蝶を「ハベル」。奄美大島で蝶や蛾を「ハベラ」。 与論島では「パピル」。 沖縄語辞典でその文語は ha-biru 。「羽(ハ)・ヒル」語源と考えられる。 文字以前の古いことばは、 ものの性質とことばの音が一致している。 それにふさわしい音をつける。 あたりまえだけど。。 参考:土橋寛『日本語に探る古代信仰』 「ヒ」のこと ・2010-02-17 中世芸能の発生 284 ハタ ヒレ ・2010-02-19 中世芸能の発生 286 ヒレ ヒラ ヒレ有る骨柄 ・2010-02-20 中世芸能の発生 287 ヒロメク 蛇 剣 ・2010-02-21 中世芸能の発生 288 自然と身体 ・2010-04-01 中世芸能の発生 298 言語の幹や根 芸術言語論 ・2010-04-02 中世芸能の発生 299 ことばの発生と本質 ・2010-04-03 中世芸能の発生 300 俳優(わざおぎ) 神態(かみぶり) ・2010-04-04 中世芸能の発生 301 歌の音 ・2010-05-16 中世芸能の発生 311 狂言綺語 ・2010-05-17 中世芸能の発生 312 ことばの神聖視 ・2010-05-18 中世芸能の発生 313 やまとことば ・2010-05-19 中世芸能の発生 314 仏教が和歌を退けた理由 ・2010-05-20 中世芸能の発生 315 仏教と和歌の習合 ・2010-05-21 中世芸能の発生 316 今様即仏道 芸能者と仏教 ・2009-08-15 中世芸能の発生 186 朗詠調 ・2009-03-01 草の息 ・2009-06-28 中世芸能の発生 157 『日本人の言霊思想』 ・2009-06-29 中世芸能の発生 158 母語 母国語 民族語 つづく
by moriheiku
| 2010-02-18 08:00
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