中世芸能の発生 225 怕(おそろ)しき物の歌



つづき


万葉集。怕(おそろ)しき物の歌三首 のうち一首。


巻第十六 三八八七
天なるや神楽良(ささら)の小野(をの)に茅草(ちがや)刈り草(かや)刈りばかに鶉(うづら)を立つも (3887)

天△有哉 神樂良能小野△ 茅草苅 〻〻婆可△ 鵜乎立毛

天上にある神楽良の小野で茅草を刈り、草を刈る時に鶉を突然飛び立たせるよ。


※△部分は人の下に小と書く字(尓)。


・怕(おそろ)しき物の歌
怕しい物をよんだ歌で、魔除けの呪歌。


参照:『万葉集(四)』 中西進




ふざけて怕(おそろ)しい物を詠んだものかと思った・・。
魔除けの歌なのね。
そんなところで突然草の中から鳥が飛んだら、ビビる。


“怕物歌三首”のうちあと二首。

(3888)
奥(おき)つ国領(うしは)く君が塗屋形(ぬりやかた)黄塗(にぬり)の屋形(やかた)神が門(と)渡る


ぎゃぁ~。
字を打っているだけでこわいんですけど~。
心で声にしてるから。

沖遠い国を支配なさる君の塗屋形の船、黄に塗った屋形船が神の海峡を渡るよ。

奥(おき)つ国は奥津城(おはか)を思わせるし、
塗(ぬり)とか黄塗(にぬり)の船って、尋常じゃない感じ。
その船が神の海峡を渡るところを見てしまったら。
そうとうこわい。



(3889)
人魂(ひとだま)のさ青なる君がだた独り逢へりし雨夜の葉非左思ほゆ

人魂のまっ青な君がたった一人で、出逢った葉非左が思われる。

・葉非左は難訓


葉非左がわかんなくてよかった・・。
葉非左はわからないが、
前の二首とはまた違ったクールなおそろしさに違いないもの。
この歌の、この種の恐怖は、結構江戸以降の恐怖に近い気がする。



あ、私、「神楽良(ささら)の小野(をの)」(一首目)について
打とうと思ってたのに。
昔の人のこわい感じを感じてついビビリに。



神楽良(ささら)の小野(をの)は架空の野。
伝説上の小野。


天にある神樂良(ささら)の小野は
神聖でこわい。




ささ
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・2009-08-26 中世芸能の発生 190 他界 浄土


つづく
by moriheiku | 2009-10-20 08:00 | 歴史と旅
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