中世芸能の発生 207 里神楽




つづき


永田衡吉によると、
「里神楽」という名称は平安時代の文献に初見されるそうだ。


・永田衡吉
劇作家・伝統人形芝居研究家・民俗芸能研究家。
昭和2年(1927)折口信夫、柳田國男らとともに<民俗芸術の会>を発足。


平安時代の文献上の里神楽は、
“宮廷神楽・斎院などの巫女神楽に対して、畿内大社を始め、地方(県)の神社の、たとえば隠岐・筑前志賀島に現存する巫女神楽までを指したらしく、『梁塵秘抄』の「東には女はなきか、男巫(おとこみこ)」の巫覡(ふげき 女巫男巫)たちが、里神楽の担い手だった。”



「かぐら」(神楽)の語源はおそらく「かむくら」(神座)と考えられている。
本田安次には、
「かむくら」に神霊を勧請し、その前で行われる祈祷の式そのものを、
古くは「かぐら」といったと考えられる。

「かむくら」(神座)は、岩や植物などを立てたひもろぎ、
それらは神霊の依り代(寄り代 よりしろ)となった。

霊や神の概念ができて
それらが神霊の依り代(寄り代 よりしろ)と考えられるより前は、
それらは自然の生命の繁栄を直に願った呪具と思われる。


神楽は、こうした祭祀が源とみられる。

記紀に、
天鈿女命(あめのうずめのみこと)が天岩戸の前で、
採物を持って踊る歌舞がある。

“天香山の小竹笹を手草に結い、あるいは手に茅纒(ちまき)の矟(ほこ)を採って俳優(わざおぎ)した”。
俳優(わざおぎ)。招(お)ぐ態(わざ)。

中世には、こうしたものを芸能の始めと見ていたようだ。



採物の種々など、
首長の祭祀である神楽の形式が民間へ広まったものか、
民間に広く行われていた習俗が
首長の祭祀神楽になったものかはわからない。

ただ『魏志倭人伝』の「卑彌呼 事鬼道 能惑衆」とあることから、
卑弥呼が「鬼道」をする首長だった記述は、
生命力を司る魂振り(タマフリ)とともに、
昔の中国で鬼、つまり死者の魂を口寄せ鎮魂する習俗が
非常に古くからあったとも考えられる。






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オガタマの木  招(お)ぐ霊(タマ)の鈴
・2007-10-18 鈴とオガタマ
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この2007年になんとなく興味を持ったこと、
ここにきて焦点を結びはじめた気がする。遅・・・。




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つづく
by moriheiku | 2009-09-30 08:00 | 歴史と旅
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