中世芸能の発生 188 作仏聖 円空 棟方志功


つづき


和琴は一本の木からとった「こと」(琴)で、
現在も祭祀儀礼や日本古来の歌舞(国風歌舞 くにぶりのうたまい)に使われる。

「こと」「みこと」と名付けられた、
数少ない日本由来の楽器である。

その原型は祭祀跡から出土する。
実際には音を出さないミニチュアの琴が祭祀品や神宝として出る、

そんなことから、
和琴の原型である「こと」は、
自然の森羅万象にイノチがあると考えられていた時代、
木に宿る こと (事 音 こえ)を鳴らすことを
意識された楽器かと想像する。





各地に大量の円空仏が残っている円空のような作仏聖(山伏)は、
木や棒から仏を彫り出す。

自然の石や木の中には命や力が宿っている、
それを仏教的なことばでは、草木も仏性を持つ、と
広く信じられていた原始的な思想の流れの民族信仰がある。


作仏聖たちは、
木や棒にもともと宿る霊力というか、イノチというか、神仏を見えやすくするので、
その造作はシンプルでいい。

むしろ、それは木や棒を生かす姿でしかありえない。
木に宿らない余計な装飾を加えることは、
その命を打ち消すことだ。


五来重の言うように、
円空や木喰(木喰行道)のような作仏聖(山伏)たちが彫り出す仏を、
荒くきざんだ彫りをつたないととることや、
洗練されない素朴な味という視点で見ることは間違っている。

それらの仏は、思うさま美しく作られ装飾された仏像とは違う。

見せるための仏でない。
木端をきざみつづけた作物聖の彫り出す仏は、
庶民の中で、死者に添えられて海へ流されたりする、
民衆の願いとともに日々使われ放される仏で、
一本の棒、自然の中に命を見た素朴な古来の庶民信仰の精神の表れなのだ。

作仏聖たちはそうして使われるための仏をきざみつづけた。




板画家の棟方志功は、作仏聖そのものに見える。
自らの版画を「板画」と呼び、
一枚の木の板の中から彫り出す姿が。



自分が仏を造形するのでなく、
木や石や土の中にある仏を彫り出すあるいはとりだすというのは、
現代の仏師も言う。





参考:五来重『作仏聖』



・2009-07-13 中世芸能の発生 172 山伏の作歌、作仏
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仏教と古来の信仰のはざまで
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・2010-05-21 中世芸能の発生 316 今様即仏道 芸能者と仏教




・2010-05-05 中世芸能の発生 304 仏塔 心柱 刹柱
・2009-12-17 中世芸能の発生 267 一つ松 声の清きは
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神仏習合思想 リンクまとめ
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by moriheiku | 2009-08-17 08:00 | 歴史と旅
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