中世芸能の発生 148 日本霊異記



つづき


民間に仏教を広めた優婆塞ら遊行僧は、
仏教以前の、
古来の自然の中で何事かを感得してきた自然信仰や、
山岳信仰の系譜にあった。

・山岳信仰 01
・山岳信仰 02

・2008/09/14 遊行の僧



国は、公に認めた僧以外は僧と認めず、
寺院外での僧の活動も禁じていた。


平安時代初期にまとめられた『日本霊異記』は、
記録に残る最古の説話集。

古い時代から、
優婆塞ら国には正式な僧と認められない私度僧たちは、
人々を作善勧進による救いへいざない、
民間に仏教を広めていた。


『日本霊異記』はこうした宗教者たちによって繰り返し民間に語られた
神仏の霊験の物語が収録されている。
唱導説教の説話集だ。


『日本霊異記』は、
優婆塞から薬師寺の僧になった景戒によってまとめられた。

景戒は天皇発願の官寺薬師寺の僧となったが、
それ以前は優婆塞であり、
景戒自身『日本霊異記』に収録された説話を民衆に物語り、
説教をしてきた人だっただろう。

『日本霊異記』に収録された物語で、
役行者(役小角)ら優婆塞たちが活躍している。




聖や比丘尼が絵を持って民衆に霊験を説いたように、
民衆に仏教を広めた宗教者たちは
経典やそれに準ずる持ち物を持っていたようだ。


『日本霊異記』の記述にも、
一例が見られる。



・2008-09-12 中世芸能の発生 11 官の仏教 民の信仰
・2008-09-08 中世芸能の発生 08 山岳信仰の系譜 優婆塞 私度僧
・2009-07-05 中世芸能の発生 164 修験道の衆生救済


つづく
by moriheiku | 2009-06-13 08:00 | 歴史と旅
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