中世芸能の発生 121 田楽の起源と展開

つづき



『職人と芸能 中世を考える』網野善彦(編集)中、

5「田楽」西岡芳文
6「中世芸能の歴史的位置」藤原良章

面白くて。
私にも読みやすくて。

どちらも中世の田楽について書かれている。
二つを自分なりにまとめてみる。


5「田楽」においては、
時代順に田楽のイメージを並べると、

1、田植え儀礼の伴奏としての田楽
2、御霊会の出し物となり、全国の社寺に取り入れられた
  行列(パレード)としての田楽
3、演劇としての田楽能

となる。


田楽は他の民俗芸能に見られない特徴がある。
現在残る田楽に共通する要素は下記。

1、びんざさら(編木、ビンザサラ)を用いる
2、特徴的な太鼓(主に腰鼓)を用いる、が有効に使われてない
3、華美な花笠、異形のかぶり物を着用
4、踊り手の編隊が対向・円陣・入れ違いなど幾何学的な変化を見せる
5、単純で緩慢な動作と曲
6、神前で上演されるにせよ、行道(パレード)のプロセスが重要
7、王の舞、獅子舞、競馬、相撲など一連の祭礼行事(渡物)を構成するものが多い。


中世に大流行した田楽にあり、現在の田楽にないものは、
高足(竹馬みたいなのに乗ってうごく)や刀玉(ジャグリングみたいなの)
など散楽的要素。
リズム感のある、時に変則的で即興的な田楽の音楽も、現在はない。


中世の田楽の散楽的な高足・刀玉のようなものは、
専門的な演じ手でなければできない。

古くは宮中のものだった散楽から田楽への流入があったことは、
田楽の史料からも推察される。

勇躍する田楽が各地へひっぱりだこの頃、
地方へ行っているため通例だった祭礼への参勤が不可能となったことから、
代わりに猿楽が参加する経緯などもあり。
田楽から猿楽への移行もあった。




『今昔物語集』巻二十八「近江国矢馳郡司供養田楽語第七」などに見られるように、
芸能としては、仏事に演じられる舞楽に対して、
田楽は卑俗なものとも見られていた。


中世の田楽が、古代の農耕儀礼から始まり、
朝廷主催の御霊会にも取り入れられ、民衆に熱狂的にも受け入れられたものが、
徐々に洗練されて格式を持ち、先祖がえりをして各地の神事なった、
と考えた場合、

神事としての荘重さが田楽に求められたこと、
各地の祭礼での田楽の演じ手は専門職でない素人や子供であることもあって、
田楽の速度感が失われた、と考えられる。



また田楽の姿に特徴的な異様に発達した花笠は動きが制限されるものだから。
そのため大きな花笠や様々の飾りのついた笠を被っている時点で、すでに、
田楽のスピード感は失われていただろうと考えられている。



ただし笠は田楽に限ったことでなく、独自に発展していた。
それが田楽とも結びついたものだ。

笠の派手な飾りものは、山鉾や傘への信仰と同じ方向のもので、

人の被る笠の独自性としては、
“喧騒を巻き起こしながら田楽を演じることへの忌避、もしくは田楽の演者への神聖視が高まり、演者の個性を抑制し、花笠と演者を神のよりましとして崇めるようになったことを反映した変化かと思われる。”
と書かれている。


忌避と神聖視。まさに中世芸能の性質。




まだ田楽について、ほとんど知らないの。
これから少しづつ知れたらいいな。



参考
『職人と芸能 中世を考える』 網野善彦(編集)





田楽、びんざさら
・2009-04-29 中世芸能の発生 120 田楽
・2009-05-01 中世芸能の発生 122 ささら
・2008-08-13 さ行


田楽と官人
・2009-05-05 中世芸能の発生 126 鼓笛隊
・2009-05-06 中世芸能の発生 127 武官と楽人
・2009-05-04 中世芸能の発生 125 田楽の音楽



田楽、傘、羯鼓(鞨鼓、腰鼓)
・2008-06-10 『身毒丸』 折口信夫 01


中世の被り物
・2009-02-19 中世芸能の発生 75 居杭

田楽法師の装束
・2008-09-19 中世芸能の発生 17 遊行僧、田楽法師の装束  




つづく
by moriheiku | 2009-04-30 08:00 | 歴史と旅
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