中世芸能の発生 82 和歌と宣託 紀貫之



つづき



鳥羽法皇が熊野に詣でたとき、
鳥羽法皇に巫女「ヨカノイタ」が歌占で宣託を伝えた。
その歌は、

手に結ぶ水にやどれる月影は あるやなきかの世にはありける

紀貫之の歌だった。

中世の人々に、紀貫之がどのように捉えられていたか。
人々にとって和歌がどのようなものだったか、
その一端を見る思い。


和歌は、
「言霊(ことだま)の幸(さき)はふ国」で、
幣として奉げられ、祝詞であって、
ある時は宣託となった。

中世のお能の作者が、ストーリーに紀貫之が登場させたのも、
こうした中世の人々の見方の反映。


よく知らないけどお能の作者世阿弥という人って、
どっぷりたっぷり中世人。。という気がする。


身体表現のことは何も言えないし、お能の具体的なことも知らないけれども、
ただ、お能の世界観は、
作者の独創というような範囲の狭いものでなく、
中世人意識の総体と感じる。




折口信夫の学問は、
折口の豊かな感受性から発想された独創的な学問のように
言われることがある。

しかし歴史をたどってみて実感するのは、
折口の古典の読書量の圧倒的な豊富さだ。

それらが折口の経験とつないで、
世界を浮かび上がらせている。

それはある民俗の総体だ。


岸の見えない、足が底へ届かない折口学の深みは、
折口の学問が総体だからだ。




紀貫之
・2009-02-14 中世芸能の発生 70 世阿弥と紀貫之
・2008-02-01 「仮名序」カナを使う意味



和歌
・2009-03-25 中世芸能の発生 91 日本語の音
・2009-03-26 中世芸能の発生 93 歌の展開
・2009-02-12 中世芸能の発生 68 読経と芸能
・2009-03-04 中世芸能の発生 81 歌占
・2009-04-06 中世芸能の発生 100 ことむけやはす





ヨカノイタのイタはイタコやユタと同じ語なのかしら。



つづく
by moriheiku | 2009-03-05 08:00 | 歴史と旅
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