つづき 狂言『居杭』。 居杭は、いつも頭をた叩く人に自分の頭を叩かれたくなくて、 清水の観音様に願をかけて頭巾を手に入れた。 それは被ると姿が見えなくなる頭巾。 頭巾を被ればもう頭を叩かれない。 頭巾を被って姿の見えなくなった居杭は、 周囲の人をからかって遊ぶ。 ストーリー中、居杭を探す人に頼まれ居所を占った占い師が 「公界者に手をかけるとは」と怒る場面があるんだって。 すごい、オール中世。 中世思想満載。 袋、頭巾、笠、扇。 被りものをしている間は、身分も離れ、 俗の縁が切れ、 俗の世界の人でなくなったと考えられた。 こうした考え方は古い祭にも見られるように古代からあるものだが、 中世にはそうした考え方が特に強く意識された時代だと思う。 ・2009-02-18 中世芸能の発生 74 公界 連歌、茶道、華道、田楽、浄瑠璃、猿楽(お能)、歌舞伎、 日本の伝統芸と言われるものの多くは中世に完成したものが多い。 それらの多くは民俗学でよく言われるところの公界の芸術。 公界の人によってなされた。 寺社や道、辻、山、河川敷は公界。 そこを往来遍歴する人々やそこに集まる人々は、 俗世の縁から切れた公界の住人、 身分にも権力にも拘束されない逸脱した また逸脱せざるを得なかった人々が、 芸能の担い手になっていたようだ。 子供のころからしているお稽古ごとがある。 地位に執着することが大好きな先生方もいらっしゃる。 ここに、 どこにも属さないという自覚、 身分の上下にとらわれず枠にはまらない バサラな公界の芸だったことの矜持はないかと、ふと思う。 長い歴史の中で価値は変わり公界は意味がなくなった。 それが現代の芸能の洗練かも。 ・2009-02-18 中世芸能の発生 74 公界 ・2009-02-02 中世芸能の発生 60 芸能者の童形 ・2009-01-25 中世芸能の発生 54 職能民 ・2009-01-26 中世芸能の発生 55 聖性の失墜 ・2009-01-01 中世芸能の発生 48 芸能と差別問題 つづく
by moriheiku
| 2009-02-19 08:00
| 歴史と旅
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