中世芸能の発生 61 異能の童子


つづき


東大寺のお水取りと言われる二月堂修二会に堂童子や呪師(咒師)が役をする。

修二会の一連の行法の間中、
呪師や堂童子が折々に祓えをするなど、先立つ役をする。

1200年以上続く東大寺の修二会は、
神道的、あるいは密教的に変化した仏教以前の信仰の形を含む
日本の仏教の古い姿をよく残している。


修二会の、
紙で作る椿の花。
お香水である若水
火。
それらにも古代の素朴な感覚が匂う。




平安時代初期の仏教説話集、
『日本霊異記』(日本現報善悪霊異記)にも、堂童子が登場する。

十月に、
中世芸能、語り物の歴史につながるかなと、
『梁塵秘抄』と一緒に読み直した。
・2008-09-14 遊行の僧



『日本霊異記』に登場する童子。あらすじ。

敏達天皇の時代、尾張の田んぼに雷神が落ちた。
それは子供の姿をしていた。
農夫が雷神を打ち殺そうとすると、
良い子を授けるので殺さないでくれと頼み、空へ帰った。

やがて農夫のもとに生まれた子供は力が強かった。
成人して力試しに京(奈良)へ上り、元興寺の童子となった。

元興寺では鐘つき堂の童子が鬼に食べられることが続いていたが、
この者がその鬼を退治した。

この者は後に優婆塞となり、強力を発揮し、
正式に得度し僧になった。

・2008-09-08 中世芸能の発生 08 山岳信仰の系譜 優婆塞 私度僧


童子形であることと、異能であること、
聖なるものとの結びつきは、
『日本霊異記』の中にも見られる。






・2008-10-30 地形を旅した 椿
・2008-01-12 みつ 01 水 折口信夫
折口信夫の言う
“時を限って”海の彼方の常世から岸に寄せる水が、
 川を遡り、山野の井泉の底にも通じて春の初めの若水となるものである”。
若水信仰のような形が、今もどこかに生きていて、
冬の間続けられ終わると奈良に春を告げる
東大寺、二月堂の修二会の、
お水取りになっている。





・2009-05-13 中世芸能の発生 131 だだ 足踏み



・2009-02-01 中世芸能の発生 59 童子形 子供と野生
先立って祓えをする人々



・2009-07-13 中世芸能の発生 175 堂衆と千日回峰行
童子は仏(僧侶)の従者をするもの、との位置づけだった



・2010-11-12 中世芸能の発生 366 酒呑童子




修二会 修正会 呪師
・2010-11-07 中世芸能の発生 362 呪師
・2010-11-08 中世芸能の発生 363 呪師走り
・2010-11-09 中世芸能の発生 364 法呪師
・2010-11-10 中世芸能の発生 365 猿楽呪師




・2011-07-22 中世芸能の発生 402 神仏習合思想 日本人の仏教
神仏習合の底に流れるもの

神仏の習合は、矛盾の中で苦しむ精神の整合性をとるために
切実に求められ一気に進んだのではないかと思う。



つづく
by moriheiku | 2009-02-03 08:00 | 歴史と旅
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