つづき 古い時代の山岳の修行は厳しいもので、 死も覚悟されたものだったそうだ。 熊野大峯にも穢れた者を落とした谷がある。 修行中に病で動けなくなった者は、 谷へ落として埋めることになっていた。 これを「谷行」(たにこう)という。ヒーーー。 死者を葬る谷にあこやなどの名があって、 あこや、あくや、あこ、あたごなどの名が各地にのこっていることがある。 京都の東山にもあるし、山岳信仰、風葬の面影。 地獄谷と言われたところもあった。 山は他界。神や霊の鎮まる聖域で、 民俗仏教では浄土であり同時に地獄でもあり、 浄土と地獄は地続きだった。 お能で「谷行」という曲があるそう。 筋は、 母親の病気を治したい気持ちから、 少年若松が先達に頼んで峰入りするが、 途中で動けなくなり「谷行」になる。 不憫に思った先達が祈ると、役行者が現れて、 伎楽鬼神を使って若松を生き返らせた。 というもの。 ・・・お能って、お能って、中世のものだけど、 なにからなにまで古代情報が満載。。 行者(修験者、山伏)の験の力によって、伎楽鬼神が生き返らせるとは。 そこに、宗教と芸能が未分化だった古い時代があらわれる。 古い時代には、 人のする、命を活気づけ再生させるあそび・たまふりが芸能だったこと。 中世の猿楽(お能)までの水の流れを見るようだ。 ・2010-02-15 中世芸能の発生 296 ヨム 和歌を詠む(よむ) 芸能 ・2010-08-24 中世芸能の発生 346 しづやしづ しづのをだまき くりかえし 命を活気づけ再生させるあそび、たまふりを人が行う行為が、 古い時代の芸能だったこと。 ・2011-06-19 中世芸能の発生 400 遊び 神楽 ・2009-08-01 中世芸能の発生 182 芸能の始め ・2011-08-18 中世芸能の発生 410 生命の連鎖 歌から掬(すく)いとる方々 「命っていうのは、やっぱり生き物を見ていますとね。みんなつづいていこう、つづいていこうって一所懸命生きてるなって思うんです。それはもちろん死というものもあるんですけど、なんか自分だけじゃなく、他の生き物たちも含めてつづいていってほしい、っていう、そういうことがみんなの生き物の中にこう、こもってる。」 そうした行動が、人間だったら、歌や、花を植えるとか、そういう行為で、 それが生き物としての人間の表現、 と、おっしゃって、 そういう意味でもこの歌を素晴らしい、と中村さんは思われたそうだ。 日本の信仰というか、信仰ともいえない、謂わば民俗の底には、 自然という水流がずっと続いていると私は思う。 それは個人の教祖や教義など、つけようもないもの。 体系的でも哲学的でもない、 自然の実感としかいえないようなものだ。 中世芸能が生まれるまでの、 芸能と宗教と分化していない古い日本の芸能は、 自然に寄せてヨ(イノチ)をことほぐ、祝福の系譜だ。 つづく
by moriheiku
| 2008-12-31 08:00
| 歴史と旅
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