地形を旅した ふつ 剣の音


つづき


布留(ふる)の、石上神宮がお祀りしている剣の神は、

古来のたまふり(鎮魂)の主体である天璽瑞宝十種とその霊力を
布留御霊大神(ふるのみたまのおおかみ)とほかに
二柱あり、

神武天皇の東征の折、偉功をたてた剣とその霊威を
布都御魂大神(ふつのみたまおおかみ)として、

素戔鳴命が八岐大蛇退治に使った天十握剣とその威霊を
布都斯御魂大神(ふつしみたまのおおかみ)として、
お祀りしている。


布留「ふる」はいのちをふって活気づけ、再生させるたまふり。

布都「ふつ」は剣そふるう威力の音。

ヤマト王権が、
ふっつ、と剣を持って勝ち抜き、
政権の道を切り開いてきた。

また、剣のひろめく姿は、
心身を目覚めさせる。

石上神宮の山は古来(現在に至るまで)
生命を活気づけるたまふりのふる(布留)の山で、

太陽の光のもっとも弱まる時期には、
たまふりのまつりをして、太陽といのちの復活を祈る。


ある音に似た音を重ねていく、ある意味に似た意味を重ねていく、
日本的な思考の性質。


ヤマト王権の物部氏が、
もっと古い時代から祭祀の山であったその石上の布留の森に
剣を祀ったことに、
自然の命と力を重ねて司ろうとしたした当時のヤマト王権の意思が感じられるようだ。


この時代は、自然の様々な働き
(昔の人が威力、生命力、霊力、呪力と感じた自然の性質と働き)を、
意図的に、盛んに為政者の系譜に結び付けていった時代。


原始的な信仰の感触はまだあって、
人々はそれをまだ信じていたのだと思う。




ひろめく剣の神聖 ヒ
・2010-02-21 中世芸能の発生 288 自然 身体 実感
・2010-02-20 中世芸能の発生 287 ヒロメク 蛇 剣
・2010-02-19 中世芸能の発生 286 ヒレ ヒラ ヒレ有る骨柄



生命の復活 たまふり
・2009-12-09 中世芸能の発生 261 たまふり たましづめ 鎮魂
・2010-02-15 中世芸能の発生 296 ヨム 和歌を詠む(よむ) 芸能
・2011-09-01 中世芸能の発生 411 こもる こもりく 参籠 たたなづく青垣
・2011-06-19 中世芸能の発生 400 遊び 神楽
・2011-04-19 中世芸能の発生 387 桐の花 自然という底流
・2011-08-07 中世芸能の発生 404 祭り 御霊会 たまふり 鎮魂




意図的な信仰の変容
・2010-10-03 中世芸能の発生 357 檜扇(ひおうぎ)の民俗



石上神宮のたまふり
・2008-10-28 地形を旅した 冬にふる
・2008-10-28 地形を旅した 鎮魂の布留
・2010-02-15 中世芸能の発生 296 ヨム 和歌を詠む(よむ) 芸能




石上は、袖振る布留(ふる)。
剣の霊力がまつられて、石上は布都(ふつ)の山にもなったけど、
万葉人にとって石上は袖振る布留(ふる)、
愛しい人に袖を振る恋のイメージの山だった。
・2008-10-28 地形を旅した 袖振る布留


お能の石上の布留   ダジャレのような筋が何気に残念~~
・2008-10-28 地形を旅した 布留でする恋





「ふゆ」「はやす」生命力の増殖、再生
・2010-05-14 中世芸能の発生 309 はやし はやす



・2010-08-24 中世芸能の発生 346 しづやしづ しづのをだまき くりかえし



つづく
by moriheiku | 2008-10-28 08:03 | 歴史と旅
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