中世芸能の発生 29 勧進聖 自然居士



つづき

勧進が盛んになり、
勧進を専門にする勧進僧、勧進聖も現れた。

お能に出てくる自然居士は、この勧進僧の一種なんだろう。
羯鼓を打ち簓(ささら)を鳴らして勧進説法する。

自然居士は実在の人物で、
寺院に雇われた半僧半俗の優婆塞で、
土木建設工事などの社会事業も行っていた。


もっと昔の行基や景戒など、
人々を集め、土木工事や福祉など大きな社会事業をした優婆塞(僧)の流れの人で、
自然居士はやはり土木事業等のプロデュースなどしており、
勧進僧としてなかなかやり手だったかなあと想像する。

中世の勧進は、勧進を募るのに一層芸能を伴う形になっていただろう。
若くハンサムでやり手、ボス的でもあり、芸達者で、人情味もあって。
でも僧より賤しい者として、寺社に雇われる立場でもあって、と。

お能の自然居士はヒーローの素質十分。


中世に、すでに芸能者は賤視の対象になっていたけど、
中世の猿楽(お能)の作者には
古くからの流れの宗教者の良い記憶があって、
自然居士はヒーローと描かれた。



寺院の中心にいる高僧たちは、市中を勧進にはまわらない。

寺社に属して各地を勧進し、仏教を広めて歩く宗教者の多くは、
土木、まじない、薬など実際的な技術を持ち
人々の間にはいる宗教性を帯びた人たちだった。




戦乱からの寺社の復興のため、一気に増えた勧進だけど、

人々の興味に近づけて仏法をわかりやすく紹介し寄付を募る勧進に
世俗化はつきもので、

勧進僧尼の質の低下が起き、
そのことでも彼らは神聖さをうしなっていったようにみえる。


宗教的な芸能から庶民の芸能へ、芸能が開いたことも、
芸能をする人々に対する差別と表裏したようだ。





自然居士
・2008/07/21 中世 07 芸能の独立
・2008/08/13 さ行
・2008/08/20 夏の暦

・2009-05-01 中世芸能の発生 122 ささら



・2009-06-14 中世芸能の発生 149 優婆塞の衆生救済意識



勧進 仏法を柔らげて語ること 勧進の人々の持つ罪悪感
・2010-05-21 中世芸能の発生 316 今様即仏道 芸能者と仏教




つづく
by moriheiku | 2008-09-25 08:01 | 歴史と旅
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