「ほ」を見る。



“ある注意を惹く様な事が起つたとする。
 古人は、此を神の「ほ」として、其暗示を知らうとした。”
(折口信夫 国文学の発生 第二稿)



冬の明けきらない頃、
枝ばかりの木々の先に咲く花に
「ほ」を見る。

それを幸いのしるしのように感じ、
あらわれた「ほ」に、
先の幸いを重ねる。


生物として、季節の予兆を身体に感じていると思う。

春のはじまりに、
いくつもいくつも「ほ」を見つける。



早い春、ほかに先がけて咲く花に
その年の豊かさを占った人々の気持ちを思う。





注意を惹くようなものやことに注目する身体感覚を起こす性質のものひとつ。
それを古人は神の「ほ」のあらわれと感じた。

“人は「ほ」の出来る限り好もしい現れを希ふ。”

“寿詞(よごと)を唱へる事を「ほぐ」と言ふ。「ほむ」と言ふのも、同じ語原で、用語例を一つにする語である。「ほむ」は今日、唯の讃美の意にとれるが、予め祝福して、出来るだけよい状態を述べる処から転じて、讃美の義を分化する様になつたのである。”

“たんに現状の賛美でない。「ほむ」・「ほぐ」という語は予祝する意味の語で、未来に対する賞賛である。その語にかぶれて、精霊たちがよい結果をあらわすものという考えに立っている。”


ことほぎ、言葉で「ほぐ」。よごと。
近年まであった正月の門付けの家褒めなども、
現実にそのようになるよう、ことばとからだでする予祝。
ものごとがそうなるように願って、ほめる。


「ほ」ということばの音の中に、期待がある。


稲の「穂」は、
「ほ」の出現であり、
豊かにみのった「ほ」の結果だ。




・2008/03/23 春の黄の花木 マンサク
まず咲くマンサクは、
早い春から、黄色の糸を束ねたような花が咲く。

少し前まではどこにでも見られた花木だそうだが、
身の周りにさっぱり見ない。
人の手の入る林によく見られたそうで、
人手が入らなくなったためか、伐採が進んだか。

冬から春に移る色のかすれた山に、
黄金色の糸がひらひらとつく枝に、
豊穣のほを見ていた。




予兆 「ホ」
・2012-02-16 中世芸能の発生 428 「ホ」 穂(ほ) 寿(ほ)ぐ 誉(ほ)む 言祝ぎ(ことほぎ)
春のはじまりに、
いくつも「ほ」を見つける。
さきがけの「ホ」に、私達は予兆を見る。




・2008/07/28 芸能の発生 古代~中世 03 和歌とよごと
・2008/07/28 芸能の発生 古代~中世 02 ことわざと歌




「イ」
・2012-02-13 中世芸能の発生 425 市(イチ)のイ
・2010-06-05 中世芸能の発生 320 祈(イノ)リ イ罵(ノ)り
日本の「イノリ」(祈り)とは、
抽象的な神に敬虔な願いを捧げるような新しい祈りでなく、
「イ」を宣(ノ)る強い行為であったこと。



「ヨ」
世 代 夜 黄泉(よみ) 常世(とこよ) 詠む(よむ) 寿詞(よごと) 暦(こよみ)
・2010-02-12 中世芸能の発生 293 ヨ
・2010-02-15 中世芸能の発生 296 ヨム 和歌を詠む(よむ) 芸能



「チ」
血(ち) 乳(ちち) 道(みち) 市(いち) ヲロチ(おろち)
・2012-02-14 中世芸能の発生 426 道(ミチ)のチ
・2010-02-11  中世芸能の発生 274 イノチ ユリの花




「ヒ」
日 火 檜 ヒレ(鰭) ヒロメク ヒラメク ヒレ〈領巾・肩巾〉
・2010-02-17 中世芸能の発生 284 ハタ ヒレ
・2010-02-18 中世芸能の発生 285 ヒ ヒル ヒヒル 蝶
・2010-02-19 中世芸能の発生 286 ヒレ ヒラ ヒレ有る骨柄
・2010-02-20 中世芸能の発生 287 ヒロメク 蛇 剣
・2010-10-03 中世芸能の発生 357 檜扇(ひおうぎ)の民俗




「キ」
木(き) 毛(け) 気(き・け) 気枯れ 穢れ(けがれ)
・2011-09-05 中世芸能の発生 412 キ(木) 毛(ケ) キ・ケ(気)




「ユ」
斎(ゆ) 湯(ゆ) ユ槻(ゆつき) ユ笹(ゆささ) ユツ真椿(ゆつまつばき) 
・2010-02-04 中世芸能の発生 268 古代における聖性とは
・2010-04-08 中世芸能の発生 303 日本料理 湯屋 湯聖(ひじり)
・2009-10-19 中世芸能の発生 224 ゆささ 湯




「ニ」
匂う(ニホフ) 丹(ニ) ニフブ(和ぶ 柔和) ニコニコ
・2010-02-13 中世芸能の発生 280 ニフ 土地
・2010-02-13 中世芸能の発生 278 ニコニコ ニフブ 笑む
・2010-02-13 中世芸能の発生 277 住吉のハニフ(黄土)




他「イ」の性質を含む行為の例  斎(い)む 忌(い)む 祝う 呪(いは)う
・2010-02-06 中世芸能の発生 270 イハフ
・2010-02-07 中世芸能の発生 271 イハフ言葉 イハフ行動
・2010-02-08 中世芸能の発生 272 マツル
・2010-02-09 中世芸能の発生 273 イム




<性質をあらわす一音節について>

「チ」「二」「ヒ」  一音節  固有名詞にならないもの  土橋寛 
・2010-02-21 中世芸能の発生 288 自然 身体 実感
・2010-07-07 中世芸能の発生 335 固有名詞にならないもの



・2010-03-05 中世芸能の発生 292 海幸山幸(ウミサチヤマサチ) ことばの音


・2011-10-04 中世芸能の発生 418 意味の変遷


・2010-02-15 中世芸能の発生 296 ヨム 和歌を詠む(よむ) 芸能
by moriheiku | 2008-08-13 08:00 | 音と笛のまわり
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