土地の木 03




つづき



日暮れのほの暗い時刻にぱお(実家)を出て、
通りを挟んだお向かいの枯れた木を見た。

シルエットになっている幹の周囲に、
少々違う影が見えた。


あれは、
葉だ。


細い筋は、
細い枝だ。





太いの幹の他に一枚の葉も一本の枝も残さず
その大きな木をぶつりと切って以来、

長い時代にわたって広くはった根から無数の導管をのぼらせ、
たくさん吸い上げてきた水の行き場もなくなって、

そのままその木は数年間がんばって生き、
ついに太い幹は乾いた色に変わった。

木は枯れた、
と思っていた。



その乾燥してしまった胴から、
枝と緑の葉が出てきていた。


小鳥がとまってもしなるくらいまだ細い枝に、
葉はあんなに緑だ。



土地に本来自生する植物は強い。
助けがなく世話をしなくても生きる。


失せたあと再生するのは土地本来の木だ。
これが土地の木の強さだと思った。

ありがとう。






その家で暮らしてきた御婆様と、
その土地に長くあった木の命は、
いつのまにか互いに分け合いつながりあっていたのだと思った。


生と死は同じ。
生と死はおなじことなんだ。
by moriheiku | 2007-09-05 08:00 | 言葉と本のまわり
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