『皮膚は考える』 覚書 01





皮膚は考える  (岩波科学ライブラリー 112)  傳田 光洋 (著)


 
皮膚は、環境と生体のインターフェイスである。



外部環境と皮膚


“皮膚は生体と外界の境界です。
 そのために外界に変化が起きれば、それに応じた変化が皮膚に起きる”


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環境湿度が低下すると、それに順応するため角層バリア機能は向上する。

それには一週間程度の時間がかかる。

環境湿度が一桁台になると、
十二時間以内に、表皮ケラチノサイト細胞の増殖が速くなる。
二十四時間以内に、角質層直下で炎症を引き起こすサイトカインであるIL-1アルファの合成が始まる。
さらに免疫系の最前線にあるランゲルハンス細胞の数も増える。


これら変化の結果として、
この状態の皮膚は外部刺激に対して通常より敏感になっている。

通常の湿度条件化では変化を示さない程度のバリア破壊や石鹸の塗布による肌荒れ状態、
すなわち表皮の増殖が激しくなり、炎症も観察されるようになる。
アレルギー性の応答も乾燥した環境下ではより顕著に現れることが確認されている。
痒みのもとであるヒスタミンやそれを分泌するマスト細胞の数も
乾燥した環境下で増えることが確認できた。

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“これらの変化は、
 角層が環境に順応するまでの間、皮膚をより敏感にすることによって生じたものです。

 万が一、角層に障害が起きた場合に、免疫系バリアをより速く発動するための
 「臨戦態勢」の状態と言えます。”



夏に暑い屋外から、エアコンで冷えた建物の中に入ったり、
冷えた電車の車内から、暑いホームへ出て、また乗り換えたり。


都市化による乾燥化や、
アルミサッシなどで密閉性の高くなった現代の住宅様式の変化による劇的な温度変化に、
外部環境のセンサーでもある肌がさらされていることも
アトピー性皮膚炎の因子であると考えている。






心的ストレスと皮膚


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人は、情動面のストレス(心的ストレス)を感じたとき、
脳下垂体から副腎皮質刺激ホルモンが放出され、それが副腎皮質を刺激し、
グルココルチコイドと呼ばれるホルモンを全身に向けて分泌する。

環境が変化すると血中のグルココルチコイドの顕著な上昇が観察される。

この時、皮膚のバリア回復は遅延する。

環境変化前にトランキライザーを投与したり、
グルココルチコイドが細胞に作用するのを防ぐ薬剤を投与は、
環境変化ストレスによるバリアの回復遅延を抑制する。


生活環境が変化すると、
情動性ストレス(心的ストレス)によって内分泌系の変化を介し、
皮膚バリア回復の遅延が起きる。
また、ストレスの緩和、内分泌系の調整によってその遅延を抑制できる。


生活の中のさまざまな精神的ストレスが皮膚角層のバリア機能に影響を及ぼす。

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東洋医学についての言及では、

東洋医学については未だに科学的検証の対象とすることを避ける風潮がある。
その理由は、効果が実証できる反面、作用するしくみや機能が明確に説明できないことにある。

その最大の理由は鍼灸における入力点である皮膚という組織についての理解が
未熟であるためではないかと、

そう筆者は考えている。




環境との情報の出入りがある開放系である我々の生命維持には、
意識にのぼらない情報の流れが必要である。

そして、その情報の流れの維持は単に神経系、循環器系によるだけでなく、
体表組織、すなわち皮膚の健康が重要である、

って。


つづく




▽関連日記 2008/03/19
第三の脳』 皮膚は考えてる 01
by moriheiku | 2008-03-20 08:00 | 言葉と本のまわり
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