インド




兄が転勤になり、
兄一家は新年度の始まる少し前に引っ越しをした。

この春から兄夫婦の長男のりょがこ(仮名)は小学1年生、
その弟のしずく(仮名)も入園。


それまでに
お引っ越し前の地元の学校の制服など揃えていた兄の奥さんのさんちゃんは、
引っ越し先の小学校と幼稚園探しも合わせててんてこ舞い。


転勤先の景色や名産、りょがこたちの学校や環境のことなど
にいにいちゃん(兄)と話してたら、
でも、そこもいつまで居られるか、と言う。

え、ちょっとしかいないの?と聞くと、
次はインドかもしれないと言う。


部署がかわり、兄の担当はインドになった。
その部署はしばらくすると各国へ行くことがほとんどで、
兄も半年か1年後に行くかもしれないという。


私は、私たちの両親のことを思った。

父と母が、大切にしている孫の、
かわいい盛りのしずく、しっかりしてきたりょがに会えなくなる。



兄によると
ちょうどスリランカから日本へ帰国したばかりの同期の方は、
現地に住んでいる間警備の人だけでも4人雇っていたそうだ。
それでもスリランカでは家族で住んでいたそうで。

ドバイさんはドバイにいた頃は家族で住んでいたが、
旦那様がサウジに転勤になり、
危険だから家族は一緒に住んではいけない決まりで、
ドバイさん一家は長い年月離れて暮らしたんだった。

私「にいにいちゃん(兄)の行くかもしれないとこ、インドのどこ?」
父「あそこだったら南の方なんだろう?」
兄「たぶんね」



両親がりょがこやしずくの顔を見れなくなっても、
まだ弟夫婦の女の子と双子の赤ちゃんがいる。

弟夫婦の双子ちゃんは入退院を繰り返していて(今も入院中)、
その度弟の奥さんは病院で付き添う必要があって、
それでなくとも忙しい両親は、上の子を預かったりして過ごしているんだから
って思うけど。

弟もいつ転勤になるかわかんない。


父も70代だし。


十歳くらい下の母は、むしろ父より気がかり。

私ではりょがこたちの代わりになれない。



たまたま
兄弟の住むところが実家からそう遠くないところに集結していた
ここ数年間だった。

兄はドイツに転勤の話が急に浮上してたところだったので、
インドは思いがけなかった。

たぶん単身赴任じゃないと言っている。
でも一緒に行くとしても、兄が半年、一年先にインドへ行って、
家族はその後になるという。




よく旅行する父が、数年前、「最後の旅はインドにする」と言った。

父はヨーロッパの旅が好きで、一番好きなのはスイス。
インドには1、2度行ったくらい。

インドは暑すぎるしハエが多いし、とそれまで父が話すのを聞いていたから、
私はとても驚いて、どうして最後がインド?と聞いたんだ。


その旅は、兄のいるインドへの旅?


符号のようで。

胸に広がる地平の、どこかがざわつく。





何かあった時、兄たちはすぐ駆けつけられない。と思った。

転勤なんてこれまでも馴染なんだし、誰にでもよくあることなのに。

全然起こってもいないことに、こんな風に心が動くなんて、
弱さにおどろくことだ。意味がない。



近頃は九九を勉強しているりょがこ。

インド、三桁の九九の国。

外国に縁の遠い、私の中のインドは、
インド学(インド哲学)の授業。
姿も名前も現代的なジェシカ。
普段もサリーを着て額にビンディーをつけていた伝統的な名の美しいサ○○ータさん。
一時行った研Q所の昼休み、ターバンにスーツ、
くじゃくのようにゆったりと
テニスコートを横切って歩いていらした物理の先生の母国。


りょがことしずくのふるさとにインドが加わるのかしら。

みんな違う経験を過ぎて人生ができるんだって思った。
by moriheiku | 2010-04-05 08:00 | つれづれ
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