つづき 倭文(しつ しづ しず)は上代の織物。 麻、楮(こうぞ)などの繊維で織られた。 神事に用いる木綿(ゆふ ゆう)、木綿を垂らした垂(しで)は、 倭文と同じ原料で作られた。 万葉集から、神に捧げる幣(ぬさ)としての倭文や木綿が詠まれた歌を いくつか挙げているところ。 ---------------------------------------- 巻第二 一五七 神山(かむやま)の山辺真麻木綿(やまへまそゆふ)短木綿(みじかゆふ)かくのみ故(からに)長くと思ひき (157) 三輪山の山辺にまつる麻幣(しで)、その短い幣のようだった逢瀬。そうだったばかりに末長くと思ったことだ。 ・神山は神奈備。この歌の神山は三輪山。 ・マは美称、木綿は楮(こうぞ)の皮の繊維で、神に捧げる幣を作る。ここは麻の幣。三輪の山辺では、短い幣が特徴だったのだろう。 ---------------------------------------- ---------------------------------------- 巻第六 一〇三一 後(おく)れにし人を思(しの)はく四泥(しで)の崎木綿(ゆふ)取り垂(し)でて好きくとそ思ふ (1031) 後に残した人を恋しく思っては、四泥(しで)の崎で幣をとりしでて、無事でいてくれと思うことだ。 ---------------------------------------- 人を恋しく思って、 四泥(しで)の崎で、木綿(ゆふ)の垂(しで)を垂(し)でて祈った。 ---------------------------------------- 巻第十三 三二八六 玉襷(たまだすき) 懸(か)けぬ時なく わが思へる 君に依(よ)りては 倭文幣(しつぬさ)を 手に取り持ちて 竹珠(たかだま)を 繁(しじ)に貫き垂れ 天地(あめつち)の 神をそあが乞(こ)ふ 甚(いた)もすべ無み (3286) 玉襷をかけるように心にかけぬ時なく、私が慕うあなたによってこそ、倭文織の幣を手にとり持ち、竹珠をたくさん貫き垂らし、天地の神々に逢瀬をお願いする。恋しさにせん方なく。 ---------------------------------------- 参考:『万葉集』中西進(著) 倭文(しつ しづ しず)は、垂(しつ しづ)と重なるものと考える。 また倭文(しつ しづ しず)は、鎮(しづ しず)、 垂らして揺らす鎮魂(たましずめ たまふり)と交わると考える。 大伴坂上郎女の氏神を祭る歌にも竹玉を垂らす。 木綿(ゆふ)の垂(しで)を垂(し)でて祈る。 昔からかける、垂らすということに意味があった。 故に、長い尾の鶏も慶ばれた。 ・2009-11-30 中世芸能の発生 254 木綿(ゆふ)畳 手に取り持ちて ・2009-11-26 中世芸能の発生 250 倭文(しつ しづ しず) ・2009-11-27 中世芸能の発生 251 垂づ(しづ) 木綿(ゆふ) ・2009-11-28 中世芸能の発生 252 白栲(しろたへ)の衣 つづく
by moriheiku
| 2009-12-02 08:00
| 歴史と旅
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