泣いて帰る




お稽古のあとは、
毎回泣いて帰る。


その日は吹き終わったあとで先生がタルラの指を
「“ななろくしちなな”になってますか」とおっしゃった。


私は、私は、空白になって、
すぐに答えられない。

そしたらもう一度、聞かれて、
私は口がこわばった。

二度目の声はイラッっとしたこわさがにじんでくるから。



「6・7 と 5・6・7 と 6・7 です」とか何とか、
唱歌の本を見てようやく答えた気がする。

そしてタルラの正しい指使いを、
タが 7、ルが 6・7、ラが 7 とうかがった。





お稽古を終わったあとは
何も思い出さないようにしていた。

電車を待ってホームにいる時、
ふと思い出して、涙がぽろぽろっと、落ちそうになった。


どうしてすぐに答えられないんだろう。

なぜ指をすぐに答えられなかったのかというと、
お稽古で何かやりとり(というほどのことでないけど)があるなんて、
思いもよらないということもあるし、

音や唱歌を、指の穴の数字ですぐに言えないこともある。


それに私は、先生のおっしゃった、
「ななろくしちなな」に私はつまづいちゃっていたから。


「ななろくしちなな」は「 7 と 6・7 と 7 」の指ということ。
ななろくしちななと切らずにつづけて早口でおっしゃったので
私はよくわかんなくなった。


「しち」と「なな」はどちらも 7 なのに、
ななろくしちななと聞いたら、なんだか数字がよくわかんなくなって、
?っとつまづいていた。



ばかみたいだ。


どうして私こんなにばかなんだろう。


それに、

こんなことで泣きそうになってるのだってばかみたいで、


ばかみたいだ。
by moriheiku | 2009-05-14 08:00 | 音と笛のまわり
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