中世芸能の発生 66 遊女の転落



つづき


義経の思い人、白拍子の静御前は、
ある人に、その高い教養を驚かれたことに対して、
白拍子は皆そうだと言った。

遊女に対する見方と、遊女自身の見方の、齟齬があらわれている。


静かよりはるか昔、
万葉の遊女(遊行婦女)も、
貴族と歌を贈答する教養を持っていた。


遊女に対する蔑視と、
遊女自身の罪の意識のおこりは、
供御人の転落と重なっている。


古来の聖性の転落と、
一般の人々の間への仏教の広まりが
遊女への蔑視のはじまりにあったと思われる。


遊女は、遍歴しながら呪術的宗教的な職能で奉仕する巫女的な人たちを指した。
タマフリ、タマシヅメ等の遊び、祈祷や占い、口寄せなどして各地を遍歴した。
宗教性をおびた芸能もその要素ひとつだった。

各地、各所に招かれあるいは出向きそれらを行う。
時代が下ると、巫女的職能と同時に物品の販売や、
寺社の勧進を行うことも増えた。

古来の聖性と、女性の社会的地位の転落にしたがって、
巫女的芸能を期待されなくなり、
売春婦的の性格を強めることになった。





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つづく
by moriheiku | 2009-02-10 08:00 | 歴史と旅
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